慢性下肢浮腫の理解と有効なアプローチは？

■要約

• 慢性浮腫は比較的よく目にする事が多く、QOLを低下させる要因となりうるため慎重な精査が必要だが、要因は複数絡んで存在するため鑑別が困難である
• 浮腫に対して水中運動は症状の改善とQOLの改善の報告が挙げられている
• 圧迫も症状(浮腫量、痛み)の改善においては有効なアプローチと考えられるが、運動能力の改善に対しては明かになっていない

■科学的知見

慢性浮腫の発生原因と身体への影響は？

末梢浮腫は多様な疾患を抱える患者に影響を及ぼす複雑な状態であり、その基礎にある病態は大きく異なる。一般的な原因として充血性心不全(CHF)、肝疾患、慢性静脈不全などの血管疾患、および手術後の合併症が挙げられる。
しかし原因は複数の要因が絡んで存在していることがしばしばあるため、診断には詳細な病歴と身体検査が不可欠となる。
浮腫の症状は局所的な症状から、日常生活を著しく制約する重度の変形性状態まで様々現れるため、心理的健康状態に悪影響を及ぼしQOLを低下させることが複数報告されている。

浮腫に対する有効な運動は？

2022年にMaccarone MCらが報告した文献レビューでは2)リンパ浮腫を持つ患者へ水中運動を実施した後、関節可動域、ふくらはぎの周囲、疼痛感覚の軽減およびQOLの改善が見られたとされている。
1995年にJ O Cioconらが報告した文献レビューでは2)下肢浮腫の改善には、1日3回20分の脚上げ運動が有効であるとされている。

圧迫による効果はあるのか？

低い運動能力を持つ下肢浮腫患者60名に対して間欠的空気圧圧縮（IPC）療法を行った研究では、8週間のうちに週3回IPC療法を受けた群と標準治療を受けた群を比較検討した、臨床的な結果(浮腫の測定、痛みのレベル、運動能力の評価)として、浮腫の量、痛みのレベルは有意な減少が見られた。運動能力の改善は見られたが、統計的には有意ではないと報告されている3)。
また外傷後や整形外科的手術後の浮腫に対する標準的な保守的治療には手動リンパドレナージ、圧迫ラップ、圧迫デバイスなどのポジティブプレッシャー法が使用され、可動域の改善や浮腫の軽減に使用されている。

■感想

普段高齢者の方のリハビリでは隣り合わせにある浮腫だが、その精査は難しいと感じていたため、アプローチを考える上での理解が深まりました。特に認識しておかなければいけないことは慢性浮腫は複雑に原因が絡み合うことが多く、経過を追って評価をしていかなければいけないということです。目にすることが多い分、軽く捉えてしまうと心理的、身体的健康が阻害され、QOLの低下を招いてしまいます。まだ詳細が研究段階で不明瞭の部分も多いため継続して情報収集を行う事と共に、臨床では患者様の既往歴、身体評価を総合的かつ継続的に観察する必要があると感じました。

■引用文献

1)Blake Smith,Chronic Edema Management of the Lower Extremities.2024 Jul 4;16(7)

2)Maccarone MC,Water-based exercise for upper and lowerlimb lymphedema treatment.
2023 Jan;11(1):201-209.

3)Mirko Tessari.Effects of intermittent pneumatic compression treatment on clinical outcomes and biochemical markers in patients at low mobility with lower limb edema.2018 Jul;6(4):500-510

4)Antonios P Gasparis.Diagnostic approach to lower limb edema.2020 Oct;35(9):650-655.

5)J O Ciocon.Raised leg exercises for leg edema in the elderly.1995 Jan:46(1):19-25

作成者：近藤翔平　資格：柔道整復師