■要約
- 糖尿病は世界的にも増えており、命に関わる重大なリスクとして考えられている
- 過体重、運動不足は糖尿病のリスク因子として影響を及ぼす
- 精神的ストレスは糖尿病発症リスクの増加に影響する
- 日常からの定期的な運動が血糖値を改善する
■科学的知見
糖尿病の危険性
2型糖尿病とその合併症は、糖尿病関連の死亡率を高めており、先進国と発展途上国のほぼすべての人口に影響を及ぼし、世界的に大きな公衆衛生問題となっている。
2型糖尿病の有病率は飛躍的に増加しており、発展途上国や西洋化または近代化が進む人口で高い有病率が観察されている。主な合併症には、末梢神経障害・網膜症・腎臓症が挙げられる。これらが悪化することで、最悪の場合、下肢の切断を行わなければならなくなる場合もある。
中には生命を脅かす合併症も存在しており、糖尿病に関して甘く考えず真剣に向き合う必要がある。
糖尿病になりやすい人の特徴とは?
長年糖尿病のリスク因子については研究が行われているが、多くの研究で明らかになっているのは「過体重」(BMI25.0以上)または「肥満」(BMI30.0以上)が糖尿病の重要な予測因子であることだ1,2)。WHOの診断基準では、BMI 25kg/m2以上を過体重、BMI 30kg/m2以上を肥満と定義している。
また、現代社会において私たちが注意をしなければならない因子として、「運動不足」、「不健康な食生活」、「喫煙」が挙げられる。これらはすべて、糖尿病のリスクを大きく上昇させることに繋がることがわかってきている2)。
心理的要因と糖尿病の関係
40〜69歳の日本人を対象として行われた研究では、精神的なストレスが糖尿病の罹患率に関与することを報告した。男性においては仕事での要求が多いことなどが強い精神的ストレスを感じることに繋がり、それにより糖尿病の危険性が高まると報告されている。一方、女性においては、タイプAと呼ばれる”時間的切迫感がある・達成欲求が強い・競争心や野心がある・いつもイライラしている・せっかちである”といった特徴を持つ方において、その特徴が強まれば強まるほど糖尿病の危険性が高まっていくことが報告されている3)。
また、家での座位時間が長いことは不安や抑うつ症状、自己効力感の低下と密接に関連しており、 2型糖尿病の女性において影響が強いことが報告された1)。
糖尿病を予防する”運動”
血糖値の改善には、柔軟性とバランスの運動を含むさまざまな種類の身体活動が推奨されている。具体的に、7日間の有酸素トレーニングは体重が減らなくとも血糖値を改善させる可能性がある。毎日ではなくても定期的な有酸素運動は、血糖値やヘモグロビンA1cを改善させることを確認したという報告もある。レジスタンス運動いわゆる負荷をかけるようなトレーニングも有効と言われているが、有酸素運動と組み合わせた”複合トレーニング”がより優れている可能性が報告されている。この複合トレーニングは、どちらか一方の運動を行うよりも大幅にHbA1cを改善すると認められている4)。
定期的に身体を動かすように意識し、なるべく座りっぱなしの時間を減らすように心がけるのが大切である。
■感想
糖尿病となる因子について教科書的な内容は頭にありましたが、より臨床的な知識については勉強が必要な範囲でした。しかし、今回このコラムを作成したことで、糖尿病のリスク因子についてより具体的な内容で理解が深まりました。特に興味深かったのは、心理的要因が糖尿病のリスク因子となりうることでした。強いストレスを抱える人では糖尿病の有病率が高かったという研究結果から、運動や食事の管理だけではなく、心理・社会的要因まで広げた視点でアプローチができるように心がけていきたいと思います。
また、Produceでの運動がこのように血糖のような内科面へのアプローチとしても考慮されているということを知っていただき、安心して通っていただけたら嬉しく思います。
■引用文献
1)Yanling Wu, Yanping Ding, et al,Risk factors contributing to type 2 diabetes and recent advances in the treatment and prevention.Int J Med Sci. 2014; 11(11): 1185–1200.
2) Hu FB, Manson JE, Stampfer MJ. et al. Diet,lifestyle, and the risk of type 2 diabetes mellitus in women. N Engl J Med. 2001;345(11):790–797
3)Masayuki Kato , Mitsuhiko Noda,et al . Psychological factors, coffee and risk of diabetes mellitus among middle-aged Japanese: a population-based prospective study in the JPHC study cohort.Endocr J. 2009;56(3):459-68
4)Jill A. Kanaley, Sheri R. Colberg, et al , Exercise/Physical Activity in Individuals with Type 2 Diabetes: A Consensus Statement from the American College of Sports Medicine.Med Sci Sports Exerc. 2022 Feb 1; 54(2): 353–368.
作成者:堀田祐貴 資格:理学療法士・腸和術師
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